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「留学」のつづき
 真夜中、冷たい青色のランプが点滅しています。


 私は一瞬にして緊張感に包まれました。車をわきに止め、窓を開け、両手を前に突出し、頭を下げ、そして誰かが近づくのをじっと待ちました。私は、窓から車の中を覗き込む男にジャケットの内側を見せ、何の武器も所持していないことを示しました。



 それくらいアメリカの警察に対し慎重に対応しました。B氏にそのようにアドバイスを受けていたからです。私は交通違反でその警察官に違反のチケットを切られました。


 
 翌日、B氏の所へ行くと、そこに日本人のH君もいました。二人に前日のことを話すと、H君が、
「奇遇ですね、鈴木さん(私のこと)。」
と、メガネの奥の目を大きく開いて、なんだか嬉しそうに話し始めました。
「僕も先日スピード違反で捕まったのですよ。でもね、鈴木さん。ここはアメリカなのですよ。」
再び大きく目を開きます。
「アメリカは何でも裁判で権利を訴えることができるのですよ。ここを見てください。」
警察官に切られた違反のチケットの裏を見せます。
「不服があれば裁判所に来いと書いてあるでしょう。」
確かに書いています。でも、珍しいことでもないように思えます。H君は大きく胸を張り、
「鈴木さん、僕は裁判に行きますよ!」
と、誇らしそうに宣言しました。
「よせばいいのに」
とすぐに思いましたが、止めることができませんでした。B氏もうつむいたまま、時に首を横に振っていました。日本語でのやり取りでしたが、見た目で会話の内容がわかったのでしょう。
「裁判に勝つには、何か違反に対する弁明がいるのでは?」
と、私が尋ねると、H君は、
「いいのがあるのですよ」
と言いながらメガネの位置を変え、そして、
「鈴木さん、一緒に行きませんか?」
と、誘ってきました。


 
 私達が行った裁判所では、法廷でのやり取りが廊下に音声で流されます。私達はそのやり取りを静かに聞いていました。やがてH君の名前が呼ばれると、彼は不敵な笑みを浮かべながら
「まあ、聞いていてください、鈴木さん。」
と私に言い残し、法廷へ入って行きました。そして、いくつかのやり取りのあと、ついにH君が無罪を訴えるシーンとなりました。
「いいのがある…」
確かに彼はそう言っていました。なぜか彼は最後までそれを私に言いませんでした。いったいどんな言い訳が用意されているのか。私は耳を澄まして彼の弁明に注目しました。




「運転中に急にお腹が痛くなりました。」
確かに彼の声です。私は耳を疑ってしまいました。
「そして、トイレに行きたくて我慢できなくなりました。」
やはりトイレを理由にしています。
「その後トイレのある場所を探すことに集中してしまい、スピードメーターを見る余裕も無くなってしまっていたのです。」
絶望的です。
「だから、スピードオーバーしてしまいました。」
何をしにここへ来たのでしょうか。
「カーン!」
と、木槌の音が鳴り、その直後に判決が言い渡されました。

「有罪!」
判事の大きな声が、廊下に響きました。

 
 
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