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「留学」のつづき
 
 春休みで清掃中の学生寮には入ることができませんでした。私は仕方なく近くのホテルに1週間ほど滞在することにしました。
ホテルの人たちは皆優しく、私の未熟な英語が引き起こすトラブルを少しも嫌がりはしませんでした。フロントでひと通り説明を受けた私は自分の部屋に入り、荷物を簡単に片づけた後、大きなベッドの上で大の字になりました。少しさびしさを感じていましたが、なぜか落ち込んではいませんでした。というよりも、落ち込まないように何も考えないようにしていたのかもしれません。そのまま私は何時間眠っていたのでしょうか。起きた時には次の日の昼でした。しばらく食事をしていないのに、なぜか空腹感がありませんでした。シャワーを浴びて着替えたあと、ソファーにもたれてしばらく壁を眺めていました。
「この部屋にいる限り何も起こらない…」
自分で自分を閉じ込めているような窮屈な感じと、その部屋が与えてくれる安心感が、妙な形で共存していました。

 
 「いつまでもホテルに閉じこもっていては…」
やはり私は少し外を散歩することにしました。フロントの人に話しかけられないようにさっさとホテルの外に出ていきました。なんだか自分が子どもみたいに思えて恥ずかしかったからです。頼れる知人はいない。かといって他人にあれこれ尋ねるほどの英語力もない。何も起こらないことを心のどこかで祈っていました。

 
 セブンイレブンを見つけたので、タバコを買いに店に入りました。レジにいたのは体格の良い黒人の女性でした。
「キャメル(日本でも売られている銘柄)ください」
と注文すると、彼女はあごを突き出した状態で、しばらく私をただじっと見ていました。彼女の大きな鼻の穴の中の暗闇に吸い込まれそうになりながら、私は現在何が起こっているのか分析していました。
「この人よそ者が嫌いなのか?」
そう思った瞬間、彼女は機敏な動きで後ろの棚からタバコを取り、私の前にそれをパーンと叩きつけました。おそらく、
「この東洋人、何を言ってるんや。タバコが欲しいのかな。何のタバコやろ。聞き直すのも面倒くさいな。ええい、これでどーや!」
と、いったところだったのでしょう。
私はお金を払い、叩きつけられたケント(タバコ)を持って外に出ました。
「キャメルがケント。キャメルがケント…」
少し肩を落としたまま、次なる修羅場へ向かいました。  
 

 
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